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レンズ用アクセサリー
レンズの機能を拡張するアクセサリーが多数出ている。表現や操作性の選択肢を広げるものや、問題点を解決する手段になり得る。
コンバージョンレンズ
レンズの焦点距離をコンバージョン(変換)する製品がある。まずはレンズの後ろに使う「リアコンバージョンタイプ」を紹介し、レンズ前面にフィルターとして使う「フロントコンバージョンタイプ」は後述する。コンバージョンレンズを組み合わせる際、レンズ自体を「マスターレンズ」と云う。

テレコンバーター:リアコンバージョンタイプ
望遠を「Tele」、広角を「Wide」と云う。
マスターレンズとボディの間に挟んで使うアダプター。焦点距離を長くする。マスターレンズを手軽により望遠(Tele)化できる。最短撮影距離は変わらないそうだ。F値が大きく(暗く)なる。後述するレンズの前面用のテレコンバーターもある。
マスターレンズを通ってきた光の中央部分を光学的に拡大、トリミングする。センサーに届く光の量が減る(トリミングされて捨てられる分)ため、暗くなるわけだ。仕組み上、テレコンバーターからはどうやってもマスターレンズで映る範囲外の光は捉えられないため、より広角(Wide)化する「ワイドコンバーター:リアコンバージョンタイプ」はない。実際には存在こそすれど、特定のレンズ用であるため実質ないに等しい。
後述1.大きなセンサーサイズ用のレンズと小さなセンサーボディを組み合わせることで、センサーサイズ以上の範囲の光がレンズからは送られているため、これを変換する「レデューサー」というものならある。↓フォーカルレデューサーを参照。
後述2.レンズ前面にセットするフィルターであれば、望遠化する「テレコンバーター:フロントコンバージョンタイプ」と、逆の広角化する「ワイドコンバーター」が存在する。
マウントアダプター
特定のマウント用にしか展開されていないレンズを、手持ちの異なるマウントを持つボディで使う手段が一応ある。

レンズとボディのマウントに挟み込む形で、マウント同士を接続するマウント変換アダプターがあり、異なるマウントのレンズとボディを組み合わせて使用できる。後述するフランジバックによって使える組み合わせが限られている。マウントアダプターの種類で後述するように、商品名には「レンズ側のマウント名」「ボディ側のマウント名」が記載されている。なぜかレンズ側、ボディ側どちらを先に書くか統一されていないため、購入時はスペックを必ず確認すること。
また、ただの筒になっているものと、レンズが組み込まれているものとがある。
マウントアダプターのレンズ付きとレンズなし
ただの筒になっているタイプは、異なるマウントを変換できると同時にマウントアダプター分レンズの焦点距離が長くなる。焦点距離が変わるのである。フランジバックの短いレンズとフランジバックの長いボディの組み合わせでは、遠くにピントが合わず近くにしかピントが合わなくなる。

レンズが組み込まれているタイプは、虫眼鏡のように焦点距離も変換するため、ピントの問題は抑制か解消される。しかしレンズが増えるため光の量が減るのと、反射が増えるのと、収差特性に影響が出るのと、このアダプター内のレンズが邪魔になって、後ろが大きく出っ張ったレンズは接続できないことがある。下のフランジバックと似た制約がある。

マウントアダプターの電子接点のありなし
さらに電子接点のある電子マウントアダプターとないマウント変換アダプターがある。
ない場合は電子制御が必要な機能が使えなくなる。レンズ情報がカメラ側に表示されない、フォーカス距離が表示されない、オートフォーカスが効かない、手ぶれ補正が一部効かない、アイリスリングがなくカメラのダイヤルでF値を制御するレンズは絞りを変えられなくなる、など。
価格に開きがあるが、電子接点付きは高価な傾向にあり、極端に安価なものはピントへの影響が大きかったり、ガタついてしまったり、高価な機材を繋ぐパーツとしてあまり妥協はしたくないものである。ただ、レンズとカメラの組み合わせによっては正常に反応しないこともあり、マウントアダプター側のファームウェアアップデートで対応する場合がある。ファームウェアアップデートでも対応できないと電子接点は無用の長物となる。
参考までにレンズ側EF-ボディ側L変換マウントの電子接点なしが4,000円前後、電子接点ありが25,000円前後と大きく開く。これで機能しないとショックが大きいため、筆者は電子接点なしで妥協している。そして手持ちのEFレンズはどれもアイリスリングがないため、絞りが変えられずに使用している。
フランジバック
ボディのマウント面からセンサーまでの距離を「フランジバック」と云う。一眼レフカメラはミラーがあるため、ミラーレス一眼カメラのほうが短いことが多い。最後尾のレンズからセンサーまでを「バックフォーカス」と云う。マウント部より後ろにレンズがある場合はフランジバックよりもバックフォーカスが短く、マウント部より前に後玉がある場合はフランジバックよりもバックフォーカスが長くなる。

バックフォーカスが短いレンズなどで後玉がレンズのマウント面から大きく出っ張っているものもあり、レンズボディ内に食い込む。一つ前のレンズ付きマウントアダプターとレンズの相性と同じく、当然センサーにぶつかる組み合わせでは使えない。一眼レフカメラでセンサーには当たらないがミラーには当たるという組み合わせで、ミラーが下がっている状態でマウントする離れ業もあるが、もちろん自己責任の非推奨。
フランジバックによるマウントアダプターの制限
レンズのフランジバックとマウントアダプターを足した長さよりも、ボディのフランジバックが長い場合、接続できる。レンズのフランジバックとマウントアダプターを足した長さよりもボディのフランジバックが短い場合は物理的に接続できない。使えないだけならまだいいが、センサーを傷つけてしまう可能性もあるため、初めての組み合わせ時は慎重に確認する。
ネット上で信頼できそうなフランジバック情報を一覧にまとめる。筆者が定規で測ったわけではない程度の信頼度である。
Fujifilm Xマウント | 17.7mm |
SONY Eマウント | 18mm |
Canon EF-Mマウント | 18mm |
マイクロフォーサーズ | 19.25mm |
Lマウント | 20mm |
RFマウント | 20mm |
Mマウント | 27.8mm |
Canon EFマウント | 44mm |
Nikon Fマウント | 46.5mm |
OLYMPUS OMマウント | 46mm |
フォーサーズ | 40mm |
Aマウント | 44.5mm |
参考:https://a-graph.jp/2018/08/12/36773
フォーカルレデューサー
レンズから入ってくる光は円形で、「イメージサークル」と云う。これは通常レンズが対応するイメージセンサーをギリギリ覆うサイズである。
フォーカルレデューサー自体は特殊な補正レンズで、マウントアダプターとセットになっているものがほとんど。レンズとボディの間に挟んで大センサー用レンズと小センサーボディで使う。筆者が知っている限りフルフレーム用のPLマウントかEFマウントレンズ用で、イメージサークルをそのまま通すのではなく、より小さなイメージセンサーサイズに合わせて凝縮する。
特筆すべきは、「凝縮」する点にある。これにより(レンズが増えることによる光量の損失はあるが極限まで抑えられている)、フルフレームレンズの光量がそのまま小さなセンサーに届くこととなり、なんと本来のマスターレンズ性能より1段~1+1/3段明るくなってしまう。登場当時は「魔法」と称された。多くのユーザーが持っているフルフレームレンズをセンサーによる面積の損失を抑えて使え、さらに明るく撮れるとなれば、一大ブームを巻き起こしたことは想像に難くないだろう。

Metabones(メタボーンズ)が開発したフォーカルレデューサーが、この「明るくなる」点を前面に押し出した「スピードブースター」という名称を世に広めた。
スピードブースター
Metabonesが市場に参入して大ヒットを記録し、さらなる開発を続けることで対応マウントを少しずつ広げてきた。レンズとボディが正しく電子接点でデータをやりとりできるよう、また、ボディの差を考慮しより最適化するため、特定のボディ用の製品ラインが設けられている場合がある。

参考:https://www.metabones.com/products/details/MB_SPEF-M43-BT9
アダプター単体に10万円(2025年現在)を高いと見るか安いと見るか。
ただし、光量が稼げるために1段明るくなるだけであり、像は凝縮されボケが大きくなるわけではない点だけ注意。ボケの大きさはフルフレーム機で撮影した場合と同等だ。ボケを大きくする目的を期待して買わないように。あくまで1段明るくなるのはおまけで、フルフレーム用レンズのクロップ率を抑えて小センサーで使用できる点が重要だ。
フルフレーム用レンズ→APS-Cセンサー用の焦点距離を約0.71倍にする「フルフレーム換算でも1.06倍に抑えられる(ほぼ画角をそのまま使える)」タイプと、フルフレームレンズ→m4/3センサー用の焦点距離を約0.64倍凝縮にする「フルフレーム換算でも1.4倍に抑えられる」タイプと、フルフレームレンズ→スーパー16mmセンサー用の焦点距離を0.58倍にする「フルフレーム換算でも1.16倍に抑えられる」タイプがある。EFマウントレンズをAPS-Cボディに変換するものと、EFマウントレンズをm4/3ボディに変換する汎用的なアダプター、さらにBlackmagic社のカメラ用に最適化された専用アダプターを別に展開している。
0.71倍タイプであれば、50mmのフルフレームレンズをAPS-C機で使う場合、1.5掛けの75mm相当になるところ、これに0.71を掛けて53.25mmレンズとして使えてしまう。レンズmm数*1.5/0.71だ(キヤノンレンズは1.6掛け)。これは広角レンズでは1mmの差は大きく見え方に影響すると考えられるが、標準レンズ、望遠レンズでは差をほぼ感じないだろう。
0.64倍タイプであれば、50mmのフルフレームレンズをm4/3機で使う場合、2掛けの100mm相当(もはや望遠レンズ)になるところ、これに0.64を掛けて64mmレンズとして使えてしまう。レンズmm数*2/0.64だ。
そしてどちらも1段分明るくなる。恐ろしいね。
参考文献:https://www.metabones.com/article/of/EF-MFT_mount_Speed_Boosters_Upgrades
主要なカメラとレンズの組み合わせのみ引用し、ボディではBlackmagic 2.5k Cinema Camera専用や、レンズではオールドレンズなど、表にない組み合わせもあるため興味があれば公式サイトへ。
レンズ側 to ボディ側マウント | 製品 |
---|---|
フルフレームPL to Canon RF | ARRI PL Lens to Canon RF-mount T CINE Speed Booster® ULTRA 0.71x II (EOS R) |
フルフレームPL to Fujifilm X | ARRI PL Lens to Fuji X mount T CINE Speed Booster® ULTRA 0.71x Canon EF Lens to Fuji X mount T CINE Speed Booster® ULTRA 0.71x Mark II Canon EF Lens to Fuji X mount T Speed Booster® ULTRA 0.71x |
フルフレームPL to Blackmagic Design L(4K DCI/Super35以下) | ARRI PL Lens to L-mount T CINE Speed Booster® ULTRA 0.71x |
フルフレームPL to m4/3 | ARRI PL Lens to Micro Four Thirds T CINE Speed Booster® ULTRA 0.71x |
フルフレームPL to Sony E | ARRI PL Lens to Sony E-mount T CINE Speed Booster ULTRA 0.71x |
Canon EF to BMPCC4K専用 | Canon EF Lens to BMPCC4K T CINE Speed Booster® ULTRA 0.71x Canon EF Lens to BMPCC4K T CINE Speed Booster® XL 0.64x Canon EF Lens to BMPCC4K T Speed Booster® ULTRA 0.71x Canon EF Lens to BMPCC4K T Speed Booster® XL 0.64x |
Canon EF to Canon EF-M | Canon EF Lens to EFM Mount T Speed Booster ULTRA 0.71x (EOS M) |
Nikon F(GとF互換) to BMPCC4K専用 | Nikon G Lens to BMPCC4K Speed Booster® ULTRA 0.71x Nikon G Lens to BMPCC4K Speed Booster® XL 0.64x |
Nikon F(GとF互換) to Blackmagic Design L(4K DCI/Super35以下) | Nikon G Lens to L-mount Speed Booster ULTRA 0.71x |
テスト済みボディとレンズの組み合わせはもちろん確認必須。
参考:https://www.metabones.com/products/?c=speed-booster
また、対応しない(機能しなくなる)電子制御や一部本体形状などにより制限を受ける機能などがある可能性があるため、これも公式製品ページに詳しく記載がある。安くはないので購入検討の場合は絶対に、絶対によく調べてから。
マウントアダプターの選び方
スピードブースター含め、これ以外のマウントアダプターについては「ボディ側のマウント名+レンズ側のマウント名」で探す。フランジバックなど組み合わせが実現可能かによってはそもそもアダプターがない場合もある。例えばボディ側Lマウント+レンズ側m4/3マウントのマウントアダプターはない。
レンズフィルター
お待たせした。レンズ前面に固定できる一般的なフィルターと、ボディに内蔵される光量を減らせるND(Neutral Density)フィルターについて解説していく。

これから紹介する全てのフィルターにおいて、注意点としては余分なレンズを1枚追加することになるため、解像度低下や色被り、余分な乱反射などのデメリットが必ずあるが、性能が低いものはこれが大きい。パッと見で判断できるかは画や人によるが、このデメリットは仕組み上なくすことは不可能で高性能なものはこれらを最小限に抑え、高価であることがほとんどだ。金額とクオリティはほぼ比例しているため、ご自身の求めるレベルや予算で検討する。
つまりは本来必要最低限のレンズ枚数となるレンズとボディのマウントを調べ購入するのが好ましいが、希望するレンズに適応するボディがない場合、もしくは希望するボディに直付けできるレンズがない場合に変換アダプタによって妥協するという考え方だ。
また、レンズは表面のコーティングが剥がれていったり、細かな傷が付いたりといった劣化は当然起こるため、年単位ではあると思うがあくまでガラスであり消耗品であることは忘れないように。
フィルターの径
レンズ前面には基本的にメスネジが切ってある。「フィルタースレッド」と云う。外付けとなるレンズフィルターはレンズ前面のフィルタースレッドに合わせ固定するため、レンズのフィルター径に合わせた大きさを購入する。レンズの外径ではないことに注意。レンズのスペック表にフィルター径「θ49mm」などと記載があれば49mmのフィルターを購入すれば適合する。

フィルタースレッドの径と異なる径のフィルターでも、マウントアダプターよろしくサイズを変換するアダプターを噛ませれば固定はできるため、異なるレンズ径ごとにそれぞれ1枚のフィルターを購入するようなことは不要で、高価なフィルターは1枚購入し、安価なサイズ変換アダプターを複数購入するとコスパが上がる。
レンズより大きな径に変換するものをステップアップリング(例:レンズ側49mm→フィルター側67mmなど)、逆をステップダウンリング(例:レンズ側52mm→フィルター側46mmなど)と云う。レンズ接続側にはオス、フィルター接続側にはメスのネジが切ってあることが普通であり、両端にオスメスのネジを切っておけば、例えばレンズ側52mm→フィルター側72mmと、レンズ側67mm→フィルター側49mmという、ステップアップリングとステップダウンリングを兼ねる製品も作れそうだが、見かけない。厚みがネックなのだろう。
注意点として、ステップダウンリングを付けるということは、特に広角レンズでリングとフィルターそのものがフレームに入ってくるため、一般的には極力、レンズより大きなフィルターを接続するためにステップアップリングを使う。ボケフィルターなど望遠での撮影シーンでは問題になることは少ないため、組み合わせを理解して使う。
使用するレンズの一番大きなフィルタースレッド径に合わせフィルターを購入し、径の違うレンズがある場合はそのレンズ分のステップアップリングを購入しておけば、一つのフィルターを全てのレンズで使い回せる。フロントキャップも追加で買い揃えれば、ステップアップリングごと付けたままにしておける。元のレンズキャップは引き出しに眠ることになる。
フィルターの前面にもさらにフィルタースレッドがあれば、レンズ→フィルター→フィルターと数珠つなぎに重ね合わせることもできる。が、レンズの筒部分が伸びていくため、厚いフィルターや枚数を重ねすぎると画面内にフィルターが見えてしまう。ケラレがおこるため組み合わせは注意する。ケラレたところで、編集ソフトでトリミングして使っていい画ならフィルターを無理やり使うし、ケラレてはいけないのであればそのフィルターとレンズとボディの組み合わせは諦めることになる。
機能性:レンズ面の加工
強化ガラス、飛散防止といった耐衝撃に関する機能と、歪み抑制、低反射といった映りに直結する機能と、撥水、曇り防止、撥油といった両方の問題へのアプローチがある。
機能と金額が概ね比例する。
機能性:フレーム
多様な円形フィルターのフレームで何を見れば良いのか?機能性を確認する。
枠の厚み
薄いほどケラレへの影響が抑制できる。反面回す際に力を込めづらい。
内周加工
潤滑性のある加工を施されている場合、シャーッと回しやすい。
外周加工
フィルターの外側、手で回す部分にローレット加工(細かな凹凸)が施されていれば滑り止めとなり回しやすい。

ツルッとしているものは締めすぎた場合に外すのが困難になる可能性がある。この場合はネジが噛みすぎているという固いビンのフタと原理は同じであり、固く絞った濡れタオルや、ゴムまたはシリコンで作られたキャップオープナーで頑張る。
レンズプロテクター
特別な演出のないガラスで、レンズ前面に装着することでレンズを保護するためにある。とはいえおまけでUVカットが施されたものも多く、もちろん純粋なプロテクターはあるが、UVカット込みは多くのメーカーでも想定されているようで。なんならUVフィルターをプロテクター代わりに使うユーザーも少なくない。一番前のレンズを「前玉(まえだま)」と云うが、この前玉を守る。反射や画質の劣化を抑えたものほど高価。1枚を使い回すのではなく全レンズにつけっぱなしにする。
レンズが割れた場合、基本的に買い替えとなるため、薄型プロテクターでもケラレが起きる場合や、レンズ本来の映りにこだわりまくる場合といった余程のことがない限りレンズと同時購入を推奨する。物理的に事故は起こりえるため、レンズを買い替えるのと、プロテクターを買い替えるコストを比較すれば、初期投資としてのコスパは異様に高いことが明らかであろう。カメラマンにとってのレンズは、ボクサーのグローブである。僅かな色味の変化や滲みなど些末な問題と筆者は捉える。
もちろん、画の損失が少ないプロテクターは高価な傾向にあるが、レンズより安い。そして高価なレンズが割れた場合、財布が痛いことはもちろんだが、現場とクライアントへの影響も忘れてはならない。
また、本当にただのガラスではプロテクターが割れた際に破片がレンズを傷つけるという本末転倒な事態も起こり得るため、飛散防止加工を施されたものを推奨する。安くはないが、高くもない。1万円以内で見つかるだろう。悩みどころは1万円のレンズに付けるかどうか。レンズの価格とプロテクターの価格…ここが損益分岐点だ。が、レンズが破損した場合に撮影に影響が出ることを考えると、仕事の撮影であれば1円のレンズに対してもプロテクターは付けるべきと考える。
偏光(PL:Polarized Light)フィルター
自然光や照明器具など、多くの光はランダム方向に振動している。これを特定の方向の振動だけ透過する「偏光板」を通すことで透過軸方向に振動を偏らせることができる。偏光板はスリット状になっており、直線偏光を作り出せる。散乱する光を減らせるため、メガネやフィルターとして使うことで視界がクリアになる。本来の彩度を捉えられる。
森など空気中のチリなどが多い場所に太陽光が差し込むといった場面で、光が拡散され彩度が薄くなる現象に経験はあるだろうか。これを軽減しようというのが偏光である。
例えば空は空気中のチリなどで光が反射、拡散することで、波長が長く散乱しにくい赤が減衰し、波長が短く散乱しやすい青が地表に届くことで青っぽく見えている。そこから余分な反射光を偏光して取り除くことで、より青が強調できる。
ガラスや水面も偏光特性を持っており、普段目にする、なにかに反射した光はほとんど振動が整えられて跳ね返る。
カメラレンズ用には偏光フィルター、PLフィルターという呼称で売られている。ガラスとガラスの間に偏光膜を挟んでいる。
どの方向へ偏光させれば一番クリアに見えるかは入射光によるため、PLフィルターを回転させることで偏光方向をコントロールする。実際にファインダーやモニタを確認しながら回転させて使う。
反射率の高い商品の物撮りでも効果的だ。人によってはつけっぱなしという撮影者も少なくない。
葉っぱやガラス、水面、物撮りなどで反射を抑えたり、空の青の彩度を邪魔する光の散乱を抑えたりできる。ガラスや水面など平面に対して30°~40°の状態で最も効果を発揮し、真正面では意味がない。なんとかしてフィルターだけに角度を付ける工夫もなしではないが、実用度は高くはない。
PLフィルターのデメリット
光を一部遮るわけなので、製品によるが露出は1段か2段落ちる。万能ではなく、広角レンズで広大な空を映すなど範囲が広い場合などに、効果が出る部分と出ない部分のムラが出る場合がある。反射を一番抑えられる状態から90°回転させると、反射が増えることもある。ただしデメリットとメリットは表裏一体で、虹をくっきり映したい場合などに覚えておくと役に立つかもしれない。とにかく入射光とレンズの角度による。回転させて様子を見る。
PLとCPL
古いPLフィルターはオートフォーカスに必要な光にも影響が出るため、オートフォーカスが効かなくなる。
これを解決したCPL(Circular Polarized Light)フィルターであればオートフォーカスも機能する偏光が可能だ。「1/4位相差板」と云うものを追加されたもので、円偏光になる。つまりCircularだ。

ぐるぐる回転する光というちょっと想像しづらい動きをするが、縦と横の振動数、振動幅をぴたりと合わせ、XとYの位相を1/4だけズレた状態を作ることで、円運動となる。この1/4位相差板で円偏光を作り出す仕組みを図解する。

現在ほとんどのPLフィルターはサーキュラーのCPLフィルターであるが、一部、特に古い製品でサーキュラーではない純粋なPLフィルターも存在するため、購入時には一応調べて欲しい。オートフォーカスだけの問題であるため、フォーカスをマニュアル操作する撮影者はどちらを買っても関係ない。
一応、コーティング技術次第なのかとは思うが、熱によって経年劣化が早まる説はあるため、気にしてもいいと思われる。筆者は実用上気にしておらずつけっぱなしの撮影日がある。
拡散フィルター
ソフトフィルター、ソフトフォーカスフィルター、スモークフィルター、ホワイトミストフィルター、ブラックミストフィルターなど、呼び名はそれぞれあり特徴も少しずつ違うが、全て光を拡散させるためのフィルター。
PLフィルターの逆。
ソフトフォーカスフィルターは表面に微細な凹凸があるものや、屈折率を細かく変える処理が施されており、光を拡散させる。スモークフィルターは磨硝子のような表面加工が施されており、煙や霧の中のような拡散を生む。ホワイトミストフィルターは細かな白い拡散材が、ブラックミストフィルターは細かな黒い拡散材がレンズに組み込まれており、ホワイトの方が拡散効果が高い。光を拡散させるフィルターの総称としてソフトフィルターと云う。
光が拡散するということは、強い光源の光が、より暗い部分に被ってくることでコントラストや解像度の低下を引き起こす。大雑把に逆光時のフレアと同じと覚えて差し支えない。コントロールされたフレアを発生させるために設計されたフィルターである。
幻想的な画作りや肌のシワを軽減する効果がある。
ちなみに、編集ソフトでブラーを適用したコピーを描画モード:スクリーンで乗せることで似た効果を作り出すことができる。

このように、素材からダメージやフレアを消すといった「引く」ことは難しいが、素材を”キレイ(ノイズの少ない素直な状態)”に撮っておいて、後処理で「足す」余地ならある。後工程まで計算して撮影することで、作品のクオリティ、作業性を最大化できる。上記のデジタルエフェクト:ガウスブラーでは、全ての輪郭が均等に滲むため、よ~~く見ればデジタル処理であることは分かるが、必要十分なケースも多いだろう。距離や輝度に応じた滲みの大小や大気のゆらぎなどを含む、光学的に美しいフレアを加えたい場合、そのクオリティはフィルターが大きくリードする。
これらも効果の強さによって番号が付いている。
テレコンバーター:フロントコンバージョンタイプ
テレコンとも云う。焦点距離を長くする。マスターレンズを手軽により望遠レンズ化できる。リアコンバージョンタイプと違い、F値は変わらない。もちろんベストは望遠レンズを使うことだ。
ワイドコンバーター
ワイコンとも云う。焦点距離を短くする。マスターレンズを手軽により広角レンズ化できる。F値は変わらない。もちろんベストは広角レンズを使うことだ。
魚眼レンズ化するワイドコンバーターもある。
クローズアップレンズ(クローズアップフィルター)
テレコンバーターが焦点距離を長くする機能に対して、こちらは接写できるようになる。マスターレンズがこれ以上手前にピントを送れないという場合でも、そのマスターレンズの最短撮影距離を手前にシフトさせ被写体に近づけるようになる。虫眼鏡。
正確にはワーキングディスタンスを「凝縮」するため、ピントをより手前に合わせられる代わりに、無限遠にピントが合わなくなる。要は「近眼」になる。
倍率によってこれも番号があるが記載方法がメーカーによって違う。No.1、No.2、No.3などの表記や、+1、+2、+4、+10といった表記が多く、基本的には数値が大きいほど倍率が高いと考えていい。ただ一応スペックは見よう。
倍率の高いクローズアップレンズと望遠レンズを組み合わせれば、手持ちのレンズをマクロレンズの代わりとしても使えるようになる。
ただしマクロレンズでないレンズをこのフィルターを使い撮影するということは、マクロレンズと同じく、対象に近づくほどピントが浅くなるにも関わらず、マクロ撮影用にピントを合わせやすい設計ではないため、撮影難度が上がる。マクロレンズの完全な代替手段ではないということだ。また、性能によっては色のズレや解像度の低下、光の拡散が大きくなる。あくまで手持ちのレンズでより被写体に近づくための飛び道具と考える。広角レンズでは歪みが発生する場合があるため、標準レンズ以上で使う。まぁ「より近づきたい」場合に使うため、広角レンズで使うことはあまりないだろう。
おそらくクローズアップレンズを使用してでも被写体に近づきたい場合は、ピントを浅くしたい(ボケを大きくしたい)という目的ではなく、ただ近づきたいだけのことが多いはずなので(偏見)、この場合はクローズアップレンズを使用しF値は上げる。
もちろんフィルタースレッドがあればクローズアップレンズにクローズアップレンズを連結できる。
また拡大は「倍率」であるため、最短撮影距離がそもそも近いレンズには効果が薄い。焦点距離が長いほど近づける距離に顕著な差が出る。1cmからさらに半分近づけるのと、90cmからさらに半分近づける違いだ。
凸レンズなので、倍率が高いほど出っ張る。キャップやフィルターの重ね付けに制限が出る。
ボケフィルター
前述した玉ボケの形状で遊べるフィルター。比較的単純な仕組みであるため、画用紙とレンズプロテクターとハサミがあれば自作することも可能。
特殊な形状であることでケラレの可能性が上がるため、広角レンズで特に気をつける。
ストリークフィルター
アナモルフィックレンズのような線上のフレアを発生させることができる。フィルターなので簡単に回転できるため、ストリークを好きな角度に伸ばせる。フィルターに入った線に対し90°方向にストリークが伸びる。つまりタテ縞状態で横に伸びるストリークを、ヨコ縞状態で縦に伸びるストリークを発生する。
特徴的な形状で効果が強烈なため、光源が多すぎるとごちゃごちゃする点だけ注意。使い所は見極める。
クロスフィルター
ストリークの十字版。クロスしたフレアを発生させることができる。
輝かしい印象を受けるため、ストリークフィルターに比べ逆に光源が多いほうが賑やかでいいと思う。
UVフィルター
紫外線をカットする。可視光から外れる紫外線は人間の目には見えないものの、センサーでは感知することがあり、見た目と色が変わることがある。具体的には青に傾いたり赤が濁ったり、霞が掛かったりすることがある。前述のPLフィルターは反射光を抑制し本来の空の青を引き出すことになるため、例えば青空を青く撮影したい場合はPL、青被りを抑制したい場合はUVと、目的に合わせて選択する。
NDフィルター
一般的にはカメラのISOは100以下にはできないことが多い。だが夏場の日中、被写界深度を浅く(明るくなる)、適度なブラーも必要(明るくなる)となれば、ISO100でも簡単に白飛びが考えられる。
この場合に、センサーまでの間にサングラスを挟むことで、ISOを100より下げることができる。
レンズの前に装着できるフィルターや、ボディ内に内蔵されセンサー前で出し入れできる「内蔵」NDフィルターがある。
内蔵NDフィルターはメーカー自身がイメージセンサーに最適化して作ることが可能なため、性能は高い。反面、レンズとセンサーの間に物理的なスペースが必要なため、マウントによりフランジバックが短いなど(例えばLマウントなど)、コストが問題ではなく設計上導入が不可能なこともある。NDの濃さを変更できるようにするには、2枚、3枚と内蔵しなくてはならなくなり余計にスペースが嵩む。
そしてもちろんカメラ側のISOと独立しているため、NDフィルターを付けISO6400で撮影することも可能だが、これはノイズを増やすデメリットにしかならないため、何のための減光なのか仕組みを理解して使う。
ハーフNDフィルター
半分だけ黒い。境目がグラデーションになっている。空だけ露出を絞るなどできる。ただし回転はできるが移動できないため、効果を適用する面積の割合を変えることは出来ない。フレーム上部を広く暗くしたいなどが出来ない。

このケースであれば後述する角型のハーフNDフィルターがあり、こちらで解決可能。
固定NDと可変ND
固定NDには、光を反射させて通過する光量を減らす「反射型」と、光を吸収することで通過する光量を減らす「吸収型」がある。ND2、ND4、ND8…と倍々の番号が付与されており、何分の1に減光するかの度合いを示している(ND2は光量を1/2に、ND16は光量を1/16に減光する)。
数値が倍になることを1段と数える。場合によりわかりやすく段数そのままで表記されている商品もある。
フィルター\性能 | 光量 | 減光量 | 透過率 |
---|---|---|---|
ND2 | 1/2 | 1段 | 50% |
ND4 | 1/4 | 2段 | 25% |
ND8 | 1/8 | 3段 | 12.5% |
ND16 | 1/16 | 4段 | 6.25% |
3段分減光したい場合はND8か、ND2とND4を重ね付けする。重ねる場合はケラレに注意する。付け外しが頻発することから、マグネットタイプもいくらか市場に出回っている。その中でも中国のNiSiによる最新フィルター「JetMag」シリーズは、これまでのマグネットタイプからさらに薄型化しており、付け外しの手軽さよりもむしろその薄さが他に類を見ない「極薄」領域に達している。

参考:https://nisifilters.jp/pages/jetmag-pro
NiSiの一つ前の空気圧で固定できるフィルターである「SWIFT」シリーズも付け外しの点では優れているが、いかんせん厚みはネックである。筆者は正当進化と感じている。
マグネットタイプの多くは、磁力が弱く下向きに振ると外れる危険性があったが、NiSiのこいつは多少の回転でロックもできる。また他マグネットタイプのフィルターよろしく、レンズ側1段目には直接フィルターではなく、マグネットシステムの基点として磁石の入った専用アダプターが必要となるが、その制約を差し引いてもこの薄さに助けられることは多いはずである。
そして、減光量が固定のNDフィルターに対し、この濃度を1つの製品で変更できるようにしたのが可変NDである。Variable ND。偏光板が2枚重ねてあり、1枚目を回転させることで通過する光量を増減できるようにしたものだ。上記NiSiよりJetMagシリーズの可変NDは遅れて発売となっており、2025年4月現在発送を楽しみに待っている。

なぜ固定NDがなくならないかというと、偏光板を2枚使用する可変NDにはデメリットもあるからだ。「色被り」と「Xムラ」だ。
可変NDフィルターの「色被り」
固定NDでは光を反射させて通過する光量を減らす「反射型」と、光を吸収することで通過する光量を減らす「吸収型」があり、どちらも単純な減光であるため色(特定波長)への影響は少ないが、可変NDフィルターに使用される偏光板は400nm付近の波長(青、紫)の光がカットされる特性があり、つまりは黄色方向に色が傾く。色被りである。
可変NDフィルターの「Xムラ」
また、偏光板は光の方向を揃えるために格子状になっている。これらを回転させることで光を遮る面積を変えるということは、縦縞と横縞がX状に重なることになる。これにより視認できる程のX状のムラ「Xムラ」が現れる。可変NDフィルターの濃度を上げるほど(縦横のラインが90°に近づく程)、レンズの焦点距離が短いほど強く出るが、仕組み上必ず起こる。
これら色被りとXムラを抑制した製品もあるが高価であり、予算を抑えたい場合は固定NDフィルターに分がある。画像としてのクオリティを求める程、これら色被りとXムラの問題から固定ND派が一定数存在する。手軽さを優先するか、コストを優先するか、購入する際はしっかりとリサーチと検討が必要だ。
角型フィルター
レンズのフィルタースレッドに直接接続する円形のフィルターに対し、レンズ前方に専用のホルダーを据え、このホルダーにスライドしセットする四角いフィルターも存在する。円形のフィルターよりもバリエーションが豊富で、なだらかなグラデーションになっているND、狭い範囲でグラデーションするND、日の出や日の入りに対応する中央部のみのNDなど、対応できるシチュエーションの自由度が高い。
このホルダーがレンズに専用アダプターを固定するタイプと、後述するリグによってレンズ前方に配置する非固定タイプがある。
レンズ固定タイプ
フィルタースレッドに専用のアダプター、もしくはホルダーのフレームを接続する。ホルダーに角型のフィルターを差し込んで使用する。
レンズ固定タイプの角形ホルダー、これはレンズの径に依存するし、交換の手間が円形フィルターと同じになる。個人的にはハズレ商品だ。角型フィルターを使えるメリットは残るが、それだけだ。大きく嵩張る上でのメリットに見合っていないと感じる。
レンズ非固定タイプ
非固定タイプであればフィルタースレッドのないレンズや、広角レンズなど極端に出っ張って円形フィルターをセットできない場合にも使える。
マットボックスに角型フィルター用のホルダーが組み合わせられている製品もある。
また、非固定タイプは、レンズの径に依存しないメリットもある。円形フィルターであればレンズを交換したらせっせとフィルターを回して付け替えなくてはならないが、こちらはホルダーを避けてレンズだけ交換すれば良い。レンズの長さが異なる場合、スライドさせる手間はあるが、フィルターをセットし直す手間に比べればわずかである。
角型フィルターのmm数
フィルターサイズが規格でいくつかあり、170mmシステム、150mmシステム、130mmシステム、100mmシステム、84mmシステム、75mmシステムなどがある。ホルダーのサイズに一致する角形フィルターを買い足していく。mm数はホルダーの幅のサイズであり、規格のmm数は縦横の短い方の長さである場合がある。この場合はシステムのmm数よりも実物はでかい。収納の計算が狂う問題が考えられる。
角型のハーフNDフィルター(グラデーションフィルター)であれば、上下にはスライドできるためND効果を発揮する面積を調節できる。左側だけを暗くするなど横方向にグラデーションを掛けたい場合はホルダーを回転させる。
このように使用できるレンズの幅が広がるケースがあり、デメリットとしてはパーツが多く嵩張り、セットまでには時間がかかること、比較的、安くないこと。手持ちのレンズと必要な画、撮影場所と撮影スケジュールに合わせ総合的に検討する。
次回のアクセサリーは
さて、レンズ用のアクセサリーに加え、次回はボディに関連するアクセサリーに話を進める。今回言及しなかったフォローフォーカスはレンズに関連するギアではあるが、リグの一部と捉え次で触れる。
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