架空の理髪店の音声ドラマを作りました。
元ネタ→【あったらヤなCM】125_デキる風理髪店_バリカン一辺倒
はーいここ無くなっちゃいました
地元で長年親しまれた駅前のマンションが、とある資産家の手に渡り、取り壊しが決定。
その資産家こそ、カリスマ理容師の彼だ。
ハサミを極めた男は、齢87にして、究極の髪切り道具と出会う。
バリカンである。
一定のリズムで繰り出される斬撃が、男の機械にも勝る刃先のコントロールと、馴染む。
鍛えられた太い指と、その本体のカーブが、馴染む。
男は夢中になった。
軽い力で滑らせた頭を、いとも簡単に更地にしていく。
さらにその刈られた髪が、一様に同じ長さに揃えられる。
その正確さと、近年ハマっている自宅の掃除とがリンクした。
男は気づく。
「整えること」とは、「無くすこと」だったのだ。
カラン、と扉の開く音がする。
無くし甲斐のある客が入ってきた。
前髪はどのくらい、サイドはどうなどと注文をするが、迷いのないバリカンが左耳から頭頂部、右耳へと滑っていく。
「はーいここ無くなっちゃいました」
驚く客の肩へ優しく手を乗せ、男は問いかける。
「さ、今日はどうしましょうか。」



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