架空の家庭用エーテル発生器のCMを作りました。
全てから解放します
災害、飢餓、貧困、恐怖、病気、戦争、人間関係、ふかづめ…。
あらゆる心配事が蝕む、我々の生活。
複雑に発展してきたこれらを解決するのは至難の業である。
そこで、深層心理と向き合う会社、藻津原洗脳社では根幹へのアプローチではなく、対処療法の可能性を探るプロジェクトが進められた。
薬のような医学から、音楽やアロマといった民間療法まで、様々な角度からの改善を試みた。
しかし明らかに優位となる反応は得られず、プロジェクトは難航の一途を辿っていた。
ある日、創業者の藻津原は不思議な夢を見る。
丸く柔らかな光に照らされたとき、驚くほどの開放感に包まれたのである。
そうか、物理的な作用でまだ試していないことがあった。光だ。
目覚めた藻津原は、光への知識を渇望した。
たどり着いたのは物理学だ。
この世界はエーテルという物質で満たされており、これが光を伝達する。
これを新たに発生させることができれば、エーテル濃度を上げることができ、これは即ち光の濃度を上げられる可能性でもある。
地球上のエーテルを濃くすることができれば、それだけ万能薬となり得る光が自然と強くなるのだ。
実験では確かに、全ての心配事から開放される被験者が現れたが、このエーテル、新たに発生させてもすぐに霧散してしまうため、装置に限りなく近い距離や、狭い空間での使用に限られることが判明する。
大きな設備ではなく、各家庭で被験者のそばで起動する、家庭用製品にする必要があるのだ。
そうして、度重なる実験と開発により完成した家庭用エーテル発生器が世に放たれる。
副作用は、装置起動中の記憶がわずかに飛ぶことと、藻津原への忠誠心が深層心理に埋め込まれることだ。
一家に一台を目指し、数量限定での割引販売を進めた。
手始めに国内の政治家へは優先して無償配布され、そして本日、配布の完了が確認された。
翌日、虚ろな目の政治家が、藻津原洗脳社に集まり始める。
次は世界だ。すでに製品を積んだ船が、出航している。
世界は、苦しみのない世界へと、生まれ変わるのだ。



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